公益財団法人 スズキ財団
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エンジン・ハイブリッド・EVの将来
ーー自動車用パワートレインの
ベストミックスを考える
Members
草鹿 仁
座長(兼):早稲田大学 教授
理工学術院 創造理工学部総合機械工学科
大学院 創造理工学研究科総合機械工学専攻
同 環境・エネルギー研究科 環境・エネルギー専攻
武田 好央
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
エネルギー・環境領域 省エネルギー研究部門
エンジン燃焼排気制御グループ 招聘研究員
近藤 圭一郎
早稲田大学 教授
理工学術院 先進理工学部 電気・情報生命工学科
大学院 先進理工学研究科 電気・情報生命工学専攻
石川 浩
経済産業省 製造産業局 自動車課
電池・次世代技術室長
大我 さやか
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
パブリックセクター マネジャー
経産省の戦略会議−次世代自動車を5〜7割に
経済産業省 製造産業局 自動車課
電池・次世代技術室長
石川
いしかわ
浩
ひろし
草鹿
本日は皆さん、お忙しいところ、お集まりいただ きまして、どうもありがとうございます。私、(公益財団 法人)スズキ財団の審査委員をさせていただいている関 係で、座長(司会)を務めさせていただきますが、今日 のテーマは「エンジン・ハイブリッド・EVの将来」(※1 17Pの解説 キーワード参照)ということで、国の政策を担当されている方を はじめ、民間企業に勤めてディーゼルを中心にエンジン を研究し、現在は国の研究機関に移られている方、国 際的なコンサルティング会社で各国の自動車関連政策に 精通しCO2(二酸化炭素)削減対策を推進されている方、 電気・情報生命工学、昔でいうと電気工学の分野のモー ターや強電(大きな電流・電圧を使う装置)の分野を 専門とされている先生など、まさに「エンジン・ハイブリッ ド・EV」の最前線でお仕事に携わっておられる方をお 呼びいたしました。今日はざっくばらんにお話ししていた だければと思います。
では最初に、国の政策という立場から経済産業省の石 川さん、お願いいたします。
石川
皆さん、私よりお詳しい先生方ばかりですが、今日の議論の論点の提出ということで資料(5、8、9、13 Pなど参照)に沿って、お話させていただきます。
今日のテーマの「エンジン・ハイブリッド・EVの将来」 は、国の政策にとっても特に昨年来、最も大きなテーマ の1つになっておりますが、経済産業省としても、この自 動車の新しい局面にどういう方向性を出すのかということ で、経済産業大臣主催の「自動車新時代戦略会議」(※2) を新たに設置し、今年4月18日からスタートしています。
自動車の電動化の流れはピュアなEV、ハイブリッド (HV)を含めて世界的に本格化し、長期的に見れば相 当進んでくるという趨勢は否定できないことなんだろう と思います。資料にはIEA( International Energy Agency 国際エネルギー機 関※3)の見 通しETP (Energy Technology Perspectives)に基づいて作成し た1つのシナリオが載っておりますが(8P参照)、これ を見ると、純粋ガソリン車は2030年までにピークアウト すると予測されています。
しかし、これはむしろ逆の見方もできて、今、いろん な国々ですぐにEVを入れるという話になっていますが、 そう簡単にすべてがEVに置き換わるということはないの ではないか。これは当たり前のことですが、重要な点で、そうすると過渡的に内燃機関(エンジン)の効率向上と ハイブリッドが重要なカギを握ってくるということで、当 面は内燃機関とハイブリッドが数においては多い時代が 続くのは間違いありません。他方で、ハイブリッドを含 めた電動化対応とエンジンの熱効率の向上という2方面 というか、全方位作戦という形で、自動車メーカーはす べての方向に向かって頑張っていかなければいけないと いうことで、非常に難しい局面だと思います。
それで国の今の目標ですが、2030年までに国内市場 の新車販売に占める次世代自動車の割合を現状(2017年 実績)の36%から50〜70%に増やしていくという ことになっていまして、この次世代自動車はHV、EV、 PHV(プラグインハイブリッド自動車)、FCV(燃料電池 自動車※4)、クリーンディーゼル自動車で、このうちEV とPHVは20〜30%が目標となっています(9P参照)。 実績を見ると、HVはすでにほぼ目標を達成しています が、EV、PHV、FCVの目標達成に向けてはさまざまな 政策が求められるであろうという状況です。これについ ては、日本も含め世界各国で2020年以降の車の燃費規制をどうしていくかという議論が起きているところであり まして、これがどのように決まっていくかが、大きな論点 の1つであります。
ですから今やパワートレイン(自動車を走行させるため の駆動源)は純粋技術の話というよりは、各国の環境対 策によって、かなりいろんな動向が出てきている。背景と してはCO2もありますが、特にインドやASEAN(東南 アジア諸国連合)などにおいては、大気汚染や石油など のエネルギーの安定供給の問題からパワートレインやEV の普及をどうしていくかという問題になっています。また 特に中国においては、産業政策上の戦略でありますとか、 あるいは他国の企業においては、ある種の企業戦略もあっ て、パワートレインの話が出てきていると思います。それ に加えて、車の進化、まあ、自動運転とかシェアリング (Sharing)などが今後どうなるかということと相まって、 読みにくい状況になっているということでございます。
電池、燃費の革新なども含め環境全体を考慮
こうしたパワートレインの議論をしていくに当たっての 論点ですが、1つは国の政策から見ると、環境対策とい う面でどうしていくかという議論になるわけで、単に 「Tank to Wheel 」(※5)という問題だけではなく、 「Well to Wheel 」(※同)で見たらどうなるかも非常に重 要な点だと考えております。例えば中国は、EVを盛んに 普及させるということになっておりますが、電源構成から いくと石炭が7割という状況ですので、これを今のハイ ブリッドと比較すると、ハイブリッドのほうが二酸化炭素 の排出量が少ないということもありますので、環境対策 という観点からいくと、単純にEV化を進めれば良いと いうわけではなく、エネルギー政策と一体でパワートレイ ンの問題を考えなくてはいけないと思っております。
今日の議論の大きなテーマである電動化のカギは電池 ですが、過去10年で価格、性能が大きく進化していま すが、それでも今、ピュアなEVとガソリン車の価格を 比べると、EV車は高い。ですから今後、電池がどのく らいのスピードで、どの程度まで価格と性能が進化する かが非常に重要になってきます。ただ、人によって見方 が分かれるところで、数が出れば、半導体などと同様に 価格が下がってくるという見方もありますが、一方で特に リチウムイオン電池については、資源のコストがかなりの割合を占める。その資源であるレアメタル(希少金属で 現在、国によって31鉱種が指定されている)のリチウム とかコバルトなどの需要量はEV化が進むのに伴い、急 激に伸びてくる。足元でも、そうした資源の価格が上がっ てきているうえ、資源のサプライチェーンについて、中国 など一部の国の独占的、寡占的な状況もある。この資源 確保をどう考えるかも大きな論点です。
他方で電池の技術革新ですが、国としても次世代の 車載用電池の開発を支援していまして、昨今、メディア などにも出ておりますが、全固体リチウムイオン電池(※6)、 さらには革新型の蓄電池(※同)の研究開発を産官学一体 となって進めているところでございます。
最後に国の政策の全体像ですが、大事な点は、特定 のパワートレインを今後、増やせば良いという話ではなく て、IEAの見通しでは世界全体で見ると車の数は当然、 増えるということですので、政策的にEVを含めたゼロ・ エミッション・ヴィークル(ZEV ※7)を増やしていくと ともに、燃費構造もCAFE型の規制(※8)や他の支援 策を通じて、従来車も含めた自動車分野の総合的な環 境対策を考えていくということで議論を進めています。
レアメタルなど電動化に必要な資源の確保策を
草鹿
今のお話に関連して、モーターは近藤先生がご専 門ですが、モーターに使用されるレアメタルの確保策につい て、METI(経産省 )さんで何かお考えはあるでしょうか。
石川
モーターに関して一時期、 ジスプロシウムなどのレ アアース(希土類=31鉱種あるレアメタルのうちの17 種類の元素)の供給問題がありましたが、足元の状況 は良くなっています。ただ、リチウムとコバルトはしっか り対策を講じるべきではないかという議論が出てきてい ます。コバルトでいうと、コンゴ民主共和国で世界の生 産量の半分くらいが産出されます。そうしたある種の紛 争地帯ですと、普通の企業が行けなかったり、中国企 業が強かったりという問題もありますので、電動化に合 わせて、しっかりと資源の確保をしていかなくてはと思っ ています。
草鹿
ハイブリッド、プラグインハイブリッドなども含め て自動車の電動化率が高くなってくると、リチウムイオン バッテリー(電池)の性能向上とともに、もとになる資 源や素材などの確保も考えていかなくてはなりませんね。
武田
詳しくはあとからお話しさせていただきますが、 私はトラック・バスを製造する商用車メーカーと建設機 械メーカーで、ずっと、ディーゼルエンジンの研究開発 をしており、一昨年に産総研(産業技術総合研究所) に移りましたが、今の自動車の排気ガスを浄化する触媒 として白金などが使われていますね。リチウムイオン電池 やモーターに使用される素材・資源は、その状況と似て いるんじゃないかと思っています。
白金ですと、ご存知のように産出されるのが南アフリ カ(共和国)とロシアの2カ国で、ロシアは何か政策的 に供給量をコントロールしているようなところがあり、南 アフリカは一時、ストライキがあって生産量が落ちてしまっ たなどで白金の値段が変わってしまい、先が読みにくい 状況になりましたが、自動車の電動化に必要なレアメタ ル、レアアースではそういうことにならないように考えて いかないといけない、と思います。
草鹿
先物的な要素がどうしても入ってきてしまうという ことですね。
武田
例えば欧米の大きな触媒メーカーは南アなどの白 金の鉱山に資本を入れて、安定供給させようとしているよ うですが、日本の資本はほとんど入っていないですよね。
大我
(電子機器に使われているレアメタル、レアアース などの)国内にある資源をリユースやリサイクルして、い かにうまく活用していくかということも日本の競争力を確 保するうえで重要ですね。
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