座談会

* 解説キーワード

  • ※1 JASPAR(JasParとも表記=ジャスパー
    JapanAutomotive Software Platform and Architecture)
    :一般社団法人。高度化・複雑化する車載電子制御システムのソフトウェアやネットワークの標準化及び共通利用による開発の効率化と高信頼性確保を目指し、2004 年9月に設立された。自動車メーカー、サプライヤー、半導体メーカー、組み込みソフトウェアメーカーの各業種から技術者が参画し、海外・国内の関連団体とも協調して車載LAN(Local Area Network)、ソフトウェア、マイコン及び情報系領域における標準化を推進している。
  • ※2 AUTOSAR(AUTomotive Open System Architecture=オートザー):自動車に安全性や利便性の向上のためのさまざまな機能が加わり、車載ソフトウェアの規模が拡大してきたことから、ソフトウェア開発コストの削減を目指して欧州の自動車メーカーを中心に2003 年に設立された団体。車載ソフトウェアの共通化を実現するプラットフォームの仕様を公開し、その仕様の名称にも同じAUTOSARを使っている。会員はCore Partners、Premium Partners、Development Partners、Associate Partners、Attendees で構成され、日本を含めて、自動車メーカー、サプライヤー、エレクトロニクス、ソフトウェアなどの企業が加盟している。「(AUTOSARは)Pavesthe way for innovative electronic systems that furtherimprove performance, safety and environmental friendliness(性能、安全性、環境親睦性を大幅に改善させる革新的な電子システムへの道を開く)。Is a s trong global partnershipthat c reates o ne c ommon s ta nda rd : " C ooperate o nstandards, compete on implementation"(1つの共通の基準を創造する強力なグローバルパートナーシップであり、『標準で協調し、実装で競争する』)」などの目標を掲げる。
  • ※3 Connected:(※7のIoT参照)
  • ※4 シェアリング(Sharing):乗り物や家・施設などをはじめとする資産を個々人のニーズとマッチングさせ、Share=共有する、分ける=ことにより、複数の人が効率的に利用できるようにすること。対象となっている分野は、移動(車そのもの、相乗り等)、空間(家、宿泊施設、オフィス、会議室、駐車場、軒先等)、モノ(オフィス用品、各種装置、衣類・ファッション商品等)、スキル・人手(クラウドソーシング=Crowd Sourcing :Crowd〈大衆、不特定多数の人〉に事務、経理、文章作成等さまざまな業務を委託すること、介護、買い物等)、お金(クラウドファンディング〈Funding=資金調達〉等)などと広く、インターネットサイトによる情報の収集・提供、SNS(Social NetworkingService)による情報共有、スマートフォンによる位置情報の確認などができるようになったことにより、最近、急速に市場を拡大。シェアリングエコノミーと呼ばれている。新しいビジネスの要素も多いだけに、法律面の整備が課題になっている面もある。
  • ※5 ウーバー テクノロジーズ:配車とカーシェアリング用アプリケーションを世界的に提供する企業。設立は2009 年。米国サンフランシスコに本社を置く。タクシーの配車だけでなく、一般の人が自分の空き時間と自家用車を使って他人を運ぶ仕組み・サービスも提供している。詳しくはUber Japan株式会社のホームページ(HP)参照。個人の家の部屋などを宿泊施設として貸し出すサービスを仲介する米国Airbnb(エアビーアンドビー、2008 年設立。本社・サンフランシスコ)と並んで、シェアリングエコノミーを代表する会社。
  • ※6 ラストワンマイル:Last One Mile。拠点や駅、基地局などから個人の家、目的とする施設などまでの比較的短距離の区間のこと。経済産業省の「自動走行ビジネス検討会」が今年3月にまとめた「自動走行の実現に向けた取組方針」では、過疎地等における運営コストの抑制やドライバー不足を解消する新たな無人移動サービスとして、「テストコースでの実証走行において安全性や信頼性等をある程度確保した上で、2018 年にモデル地域(茨城県日立市、石川県輪島市、福井県永平寺町、沖縄県北谷町)での実証を開始…… 2020 年にラスト(ワン)マイルでの小型カートモデル、小型バスモデルによる自動運転を実現する」旨、示されている。通信基地局と利用者の家や利用する端末、配送拠点と配送先までの間などもラストワンマイルと呼ばれる。
  • ※7 IoT(Internet of Things)::パソコンやスマートフォン、タブレットといったICT(Information & Communications Technology=情報通信技術)端末だけでなく、センサーや無線通信によってインターネットと接続できる機能のあるものがつながる(Connected する)こと。自動車、家電、生産ラインをはじめ“ あらゆるモノ”がつながる可能性があり、それによりインターネットを介して情報のやり取りをすることで、モノのデータ化、大量のデータ(ビッグデータ)の蓄積・分析、マーケティング、自動化などが進展し、新たなビジネス、付加価値を生み出し始めている。
  • ※8 ディープラーニング:Deep Learning。コンピュータは電子頭脳(電脳)と訳されることがあるように、以前からコンピュータを人工知能(AI=Artificial Intelligence)として活用しようとする研究が行われている。ディープラーニングは、この人工知能の最も新しい活用技術で、これを使ったコールセンター用自動応答システムやプロの棋士に勝つ囲碁、将棋のソフトウェアなどが開発されて急速に社会的な関心を高め、現在は第3次AIブームと言われている。第1次ブームは1956〜1960 年代、第2次は1980 年代で、第2次では専門家の知識をコンピュータに入力して推論させ、専門家の意思決定を再現するエキスパート・システムが研究されたが、専門家の知識をすべてコンピュータに人手で入力することが困難であるうえ、想定外の事態に対応できないことなどから、利用が広がらなかった。
     それに対してディープラーニングは、人間が教えなくてもコンピュータがデータから自動的に特徴を抽出し、どんな特徴を利用すれば特定のものを識別できるかを自動的に学ぶソフトウェアで、IoTによるビッグデータの収集、コンピュータの性能向上、ニューラルネットワーク(Neural Network=人間の脳神経回路を模した情報処理システム)の進化などによって可能になったとされている。各種自動化装置、生活支援ロボット、家電、金融など幅広い分野で研究・応用され始めており、政府は2016年4月に「人工知能技術戦略会議」を創設し研究と産業化を後押ししている。また、一般社団法人人工知能学会は人工知能と社会との関わりを広く捉え、議論していくために今年2月、「倫理指針」を公表するなど、人工知能技術は社会に大きなインパクトをもたらすと予想されている(詳しくは総務省の「次世代人工知能推進戦略」や同省HPに掲載されている松尾豊 東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻准教授(現在は特任准教授)の「人工知能の未来 - ディープラーニングの先にあるもの」、人工知能学会のHP等参照)。
  • ※9 OEM:Original Equipment Manufacturing、あるいはManufacturer の略で、相手先(発注元)のブランドで商品を製造すること、あるいは製造する業者をいうことが多いが、ISO=国際標準化機構の自動車産業向け品質マネジメントシステムである「ISO/TS16949」の規定によるOEMは自動車(完成車)メーカーを指す。
  • ※10 モデルベース開発の「ガイドライン」:経済産業省の「自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会」が今年3月にまとめた報告書は「自動走行の実現や世界的な環境規制への迅速な対応のためには、高機能化(電子制御システム及び安全運転システムの導入、ネットワーク化)・複雑化が進む自動車開発の上流工程(設計段階)の徹底的な効率化が不可欠」「具体的には、開発・性能評価のプロセスを、実機を用いずバーチャル・シミュレーション(モデルベース開発=MBD)で行う重要性が拡大している」と前置きし、「元来我が国は企業間の『すりあわせ』開発に強みをもっており、MBDを世界に先んじてサプライチェーン全体で実現できれば、製造業の国際競争力をより高めることができる」と強調。「産産間(自動車メーカーと部品メーカー、部品メーカー間)及び産学間でモデルを流通させMBDを普及させるため、モデル間のインターフェースを定義づける『ガイドライン』を公開。上記ガイドラインを具現化した、共通基盤としての『車両性能シミュレーションモデル』を公開。研究会参加企業は、今般策定したガイドライン・準拠モデルを統一的な考え方として、モデル流通を進めるとともに、国際連携を見据えた方策を検討する」としている(研究会参加企業は自動車メーカー、車載機構部品・システムメーカー、電機メーカーなど。ガイドライン・準拠モデルは経済産業省のHP参照)。
  • ※11 ティア1:Tier(ティア)は「ひな壇の段、列、層」の意味。自動車(従来のエンジン車)は2万〜3万点に及ぶ大量の部品を組み上げて製造され、業界は素材から部品、組み立てまで、自動車(完成車)メーカーを頂点とする大きなピラミッド型の取引構造を形成している。この頂点に位置する完成車メーカーに機構部品・ユニットなどを直接納入するサプライヤーをティア1、その機構部品・ユニットに組み込まれる部品を納入するサプライヤーをティア2、さらに、その部品に組み込まれる(より小さな)部品を納入するサプライヤーをティア3……という。ただ、電動化、Connected、自動化の進展に対応して、完成車メーカーはIT、AI、地図などの分野の大手企業やベンチャー企業と国境を越えて提携し、新しい車載システムの開発に取り組む一方、ティア1メーカーにもこうした動きが拡大。また、完成車メーカーが米国シリコンバレーに研究所を開設してIT、AIに関する技術開発を強化するなど、自動車業界の構造変革も起こりつつある。