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レーザピーニングによる摩擦攪拌接合(FSW)継手材の 疲労特性向上に関する研究
沖縄工業高等専門学校 機械システム工学科 准教授 政木清孝
1. はじめに
アルミニウム合金などの軽金属合金の接合方法として、摩擦攪拌接合( Friction Stir Welding、 FSW)が注目されている。FSWは英国の溶接研究所(The Welding Institute、 TWI)によって1991年に実用化された技術で、図1に示すように先端に逆ネジの切られたピンを有するツールを回転しながら接合部に押し付け、その摩擦熱によって組織を軟化させて攪拌し、固相状態のまま二枚の部材を接合する技術である。現在ではFSW装置が実用化されたことから、航空宇宙分野、車両分野などさまざまな分野の機械構造部品に適用され始めた。

図1 FSW施工
一般に機械構造部品では、部材の振動など負荷の繰返しによって生じる疲労破壊が問題となる。航空機・車両などの輸送機器においては、部材の疲労破壊を起因とする事故が社会に多大な影響を与える場合もあることから、疲労破壊の防止は必須の項目である。この疲労破壊は部材の接合部に生じることが多く、FSW継手材においても接合部が最弱部となって疲労破壊起点となるため、FSW継手材の疲労破壊メカニズムの解明と、疲労特性改善に関する研究が精力的に行われている。本件研究では、FSW継手材の疲労特性改善を目的としてレーザピーニング処理を適用し、その効果について検討した。
2. レーザピーニング処理
レーザピーニング(Laser Peening : LP)処理とは、パルスレーザを用いて金属表面をピーニングするショットレスピーニング処理の一種である。LP処理には、使用するレーザ光源が異なる欧米式と日本式が開発されているが、本研究では日本式のLP処理を適用した。日本式LP処理は、原子力発電プラントの予防保全技術として東芝によって開発された技術である。LP処理の概略を図2に示す。水中に設置した金属材料の表面にパルス状のYAGレーザを集光し、その熱によって瞬間的に金属表面をプラズマ化する。発生したプラズマは水の慣性力によって膨張が抑制されるため衝撃波となり、材料表面をピーニングすることが出来る。LP処理は金属材料の内部に大きな圧縮残留応力を付与することが可能であり、その圧縮残留応力がき裂の発生・成長を抑制することから、疲労特性改善技術としても期待されている。またLP処理はレーザの集光部位をきめ細かに設定できることから、ショットピーニングなどに比べて局所的な部位への施工が可能であることが特徴である。

図2 LP処理概略
3. 研究内容と成果
本研究では板厚3mmのA6061アルミニウム合金を供試材とし、汎用フライスを用いてFSW継手材を作成し、その継手材から接合部が中心となるようにワイヤ放電加工により試験片を採取した。FSW接合条件、LP処理条件は紙面の都合により省略するが、試験片両面にLP処理を施して、平板曲げ疲労試験を実施した。疲労試験結果について、負荷応力振幅と疲労破断寿命にて整理したS-N曲線を図3に示す。母材(A6061)に比べて、FSW継手材の疲労特性は疲労寿命・疲労強度ともに低下している。ただし、107回疲労強度の低下割合については、母材110MPaに対してFSW継手材90MPaであり、引張強度特性の低下(母材の60%)に比べて小さい(母材の82%)ことがFSWの大きな特徴のひとつである。FSW継手材に対してLP処理を施すと、疲労寿命は顕著に改善しないものの、107回疲労強度は120MPaで母材の値を上回った。すなわち、A6061のFSW接合部へのLP処理は、疲労強度改善に有効であることがわかった。

図3 疲労試験結果(S-N特性)
LP処理によるピーニング効果で、疲労特性改善に寄与するのが組織硬さの向上である。試験片断面のビッカース硬さ分布を測定したものが図4である。縦軸は組織硬さ、横軸は測定位置を示しており、図には未処理材の結果も示している。また硬さの測定は、表面近傍、裏面近傍、中心付近の3箇所で実施した。FSW接合による熱影響により組織硬さは母材よりも低下するが、これにLP処理を施すと接合部中心付近の組織硬さが向上していることがわかる。

図4 硬さ分布
そのほか疲労特性改善に寄与するLP処理の効果として、疲労き裂の発生・進展を抑制する圧縮残留応力の付与が挙げられる。 X線回折法によって試験片表面の圧縮残留応力を測定したものが図5である。縦軸は残留応力測定値、横軸は測定位置を示している。FSW継手材の残留応力は、接合中心付近で僅かに圧縮側となる傾向があるが、その測定値の平均はほぼゼロとなっている。これに対し、LP処理を施すと、接合中心付近で100MPa程度、接合中心から離れた母材付近では200MPa程度の圧縮残留応力となっている。

図5 残留応力分布
4. おわりに
A6061アルミニウム合金のFSW継手材に対して日本式LP処理を適用した結果、107回疲労強度を母材の疲労強度以上に向上することができた。LP処理が疲労特性に与える影響は、本稿で触れた圧縮残留応力の付与、組織硬さの向上のほか、組織の微細化、表面粗さの変化などがあり、これらが重畳して疲労強度・疲労寿命特性が決まる。本研究のFSW接合条件、LP処理条件は必ずしも最適条件ではないかもしれないが、LP処理による組織硬さ向上の傾向、残留応力付与状況などを明らかにすることが出来た。 FSW接合の適用が広がるにつれて、その疲労特性解明とその改善に関する研究がますます重要となってくる。LP処理によるFSW継手材の疲労特性改善については、NASAをはじめ世界的に注目されているものであり、本研究はFSW継手材に日本式LP処理を適用した初の研究である。本研究成果が、今後のFSW継手材の疲労特性改善に関する研究の一助となることを期待したい。
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