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寄付文化の進展、寄付市場の拡大を目指して −助成財団の果たす役割は−
公益財団法人助成財団センター 専務理事 田中皓
大震災復旧に対する支援活動と寄付
去る3 月11 日に発生しました「東日本大震災」は、過去最大級の地震と想像を絶する巨大な津波、更に福島原発事故が重なり未曾有の広域にわたる大災害となりました。
紙面をお借りし、亡くなられた多くの被災者の皆さまのご冥福を心からお祈り申し上げます。被害を受けられた皆さま、関係者の皆さまに謹んでお見舞いを申し上げます。
大震災から2カ月以上が経過しましたが、まだ人道支援やライフライン復旧作業、がれき・車・船等の撤去作業、仮設住宅建設等の公的な復興活動が懸命に続けられています。
一方、公的支援の届かない住宅内の泥排出や乳幼児を抱える母子や妊婦の支援、高齢者や障害者の支援、子供たちへの支援、入浴サービス、精神面のケア等々、今後本格化する生活支援には民間非営利団体(NPO)やボランティアによる支援活動が欠かせません。
政府では各省庁が連携し「内閣官房震災ボランティア連携室」を立ち上げ、また民間では非営利団体を中心に「東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)」(全国の約400のNPO・NGO・財団等の支援団体が加盟)を組織し、官民相互に連携し情報を共有しながら被災者支援を行う体制が整いつつあり、被災各地には「災害ボランティアセンター」が設けられ、支援団体やボランティアの受け入れ態勢も整ってまいりました。
一方、日本赤十字や中央共同募金等では被災者に直接配分される義捐金を募集、また民間ではNPOやボランティアの活動を支える支援金を各方面で募集、その寄付金は阪神淡路大震災時の額をはるかに上回るペースと言われています。わが国の寄付文化は低いとよく言われますが、災害支援に対する寄付意識は決して低くはないことを示していると思います。
長期化が予測され、これから本格化する生活支援や復旧・復興活動に市民やNPOの活動を支えるための民間の寄付金、支援金は労力の提供とあわせてますます重要となってきます。
「新しい公共」の社会における寄付
政権交代後、民主党は日本の将来ビジョンとして「新しい公共」を打ち出し、その推進策を「『新しい公共』宣言」にまとめ、その後、菅政権に移行後の平成22年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」の中で、「新しい公共」は21ある国家戦略プロジェクトの1つに設定されています。
この「新しい公共」の考え方は、人の幸福や地域の豊かさは、企業による社会的な貢献や政治の力だけではなく、今や市民やNPOが教育や子育て、街づくり、介護や福祉など身近な課題を解決するために活躍し、人を支えること、人の役に立つことそれ自体が喜び、生きがいともなるような社会であるとし、その新たな主役は地域課題の解決等に直接かかわる市民やNPOであり、災害復旧と同様に主体的な活動が期待されています。
このような「新しい公共」の考え方に基づく社会の形成やこの度のような突然の大災害からの復旧・復興活動等に、いまや市民やNPOの活動を抜きには成り立たない時代を迎えていますが、市民活動やNPO活動が活性化していく前提としてその活動を支える民間の寄付金や支援金が欠かせません。その寄付金等を増やしていくには一般市民等が寄付をしやすい環境を整備する等、寄付文化の推進に向けた国の取組みが大変重要になってきます。
現在、内閣府の「新しい公共」推進会議は、寄付をしやすい環境整備に向けて23年度税制改正で「寄付金に関する税額控除の導入」や「寄付優遇を受けられる認定NPO法人拡大」に向けた税制や制度改正の提案を行い、今国会で審議される予定になっていますが、これからの日本の社会に求められるのは寄付文化の更なる進展といえます。
我が国の寄付の現状と課題
日本社会の寄付文化の進展に向けた民間ベースの取り組みとしては、日本ファンドレイジング協会(堀田力理事長、平成21年2月設立)がわが国の寄付の実態を初めて明らかにした『寄付白書2010 Giving Japan2010』(日本NPO学会審査員特別賞を受賞)を出版しています。その調査によると、2009年度の日本における個人寄付は5,455億円、法人寄付は4,940億円と推計され、日本の寄付市場を約1兆円規模と試算し、将来(長期的)は年間10兆円の寄付市場への目標を掲げて改革に取り組むとしています。(同書によれば日本の個人寄付は、名目GDP比0.12%であるが、英国の0.68%、米国の1.60%と比較すると相対的にはかなり少ない状況にある)
また、「日本においてもっと寄付が増えるようになれば良い」と考えている人が73%、税金とは別に「新しい公共」を支える資金として寄付の重要性に賛同する人は50.6%あるのに、寄付をした人は37.6%にとどまっていて、寄付の重要性の認識や理解はあるものの、個人寄付行動につながっていないのが実態であり今後の課題と指摘しています。
寄付が増える社会を期待している人が多いということは、寄付行動につなげる国の施策が重要となってきますが、その重要なポイントとして「還付比率を高める等の寄付税制の改正」、後述する「寄付をした人が優遇税制の恩典を受けられる身近な受け皿の飛躍的な拡大」、「還付を受けるための手続きの簡便化(確定申告しなくてもよい年末調整の導入等)」などの制度面、手続面の改正が急務であるのは言うまでもありません。
また、寄付をしやすい環境を整備する観点からは、NPO法人、市民活動団体、公益法人等の寄付を受ける側に関するデータが整備される必要があります。寄付をしたいと思った人が、数ある対象の中から寄付先を抽出し絞り込むために役立つデータベースの整備が急がれます。
また逆に、寄付を受けたいと思う団体、例えばNPO法人や市民活動団体等は社会や市民に対して自らの活動内容や成果等について積極的に情報を公開し、寄付者からの資金がいかに社会に役立っているかということをフィードバックすることが強く望まれます。その意味では自ら率先して社会的評価を受けるという姿勢が欠かせません。
寄付市場の拡大に向けて助成財団は
平成20年12月に実施された新しい公益法人制度は、寄付の受け皿の飛躍的拡大策の1つとなっています。公益法人の中には寄付した者が税制面で優遇を受けられる「特定公益増進法人」が存在しますが、この法人は25,000公益法人のうち約900法人にしか認められていませんでした。制度改革により新公益法人に移行した法人はすべて「特定公益増進法人」に該当することになりましたので、仮に現存する公益法人の6割が新しい公益法人に移行したとすれば、寄付者優遇税制の対象となる受け皿は、これまでの900法人から15,000法人へと飛躍的に増加することになります。スズキ財団は既に新公益法人に移行していますが、これからの助成財団も早期に移行して寄付者優遇税制の対象となる受け皿として寄付市場の拡大に寄与することが望まれます。
また、NPO法人も同様で、寄附者優遇税制の対象となる「認定NPO法人」は、NPO法人数約42,000法人のうちわずか205法人しか認められていません。平成23年度税制改正でこの認定NPO法人の認定要件を緩和し、寄附者優遇税制の対象となる認定NPO法人の数を飛躍的に増加させる改正が今国会で審議される予定になっています。
この流れを振り返りますと、大災害からの復旧・復興等の活動支援をはじめ「新しい公共」における市民やNPOの活動が我が国の発展に欠かせぬ存在となる社会においては、寄付文化の推進、寄付市場の拡大はその大前提となってきます。
寄附者優遇税制の対象となる公益法人やNPO法人、とりわけ助成財団の役割は、市民からの寄付の受け皿としての機能をしっかり果たすことで日本社会の寄付文化を進展する役割を担うと同時に、一方では受けた寄付金を市民やNPOの活動、研究等に効果的に配分し、しっかりした市民活動やNPO活動を育て定着させることにより「新しい公共」の目指す社会に寄与していくという両面の役割を担うことになります。
このことは、助成財団がわが国の「主権在官」といわれる古い体質から、市民やNPOが主役となる本物の「主権在民」体質への脱皮を推進するという大変重要な役割の一端を担うことにもなります。公益法人制度改革を経た今、助成財団にはその役割を認識した活動が求められていると言えるのではないでしょうか。